バックオフィス業務のDX
バックオフィス業務のDX推進
~インボイス制度・電子帳簿保存法改正~<前半>
バックオフィス業務のDX意義
DXの目標・目的はデジタルテクノロジーを導入することによる「企業の競争上の優位性を確立すること」です。そのため、定型業務であるバックオフィス業務の効率化ではなく営業などフロントオフィス業務こそにDXが最適と考えらますが、そうではありません。
日本では、売上を上げることに直接関わらないバックオフィス部門は、直接利益を生み出さないため、文字通り後ろでフロント部門を支援する部隊という認識が定着しています。しかし、企業の生産性を上げるためには、バックオフィスとフロントオフィスが連携し、業務をサポートすることが重要です。海外ではバックオフィス業務は「ビジネスの成果に貢献する付加価値部門」と言われるほど、重要なポジションなのです。
経理や企業間取引、人事労務といったさまざまなバックオフィス業務にITツールを導入することで、業務効率化やコスト削減、働き方改革などを進め、それによって生まれる余剰なリソースをフロント業務に投入することにより「競争上の優位性」を実現することができます。
ただし、ITツールを導入して業務ごとの効率化を図るだけでは、それぞれの業務のデジタル化を行うだけになります。真のDXを実現するためには、DXのXである「ビジネスプロセスの変革」を行う必要があり、それぞれの業務をデータでつなぎプロセスの削減を行い、DXを実現するための環境を整えることが重要です。
特に経理業務や企業間取引は、バックオフィス業務の中でも「競争上の優位性」に直結しやすい領域です。経理の業務はある程度の定形業務があり、ITツールを適用しやすいといえます。また企業間取引業務も紙をなくしEDI化するなどデジタル化を適用しやすい業務が多いといってよいでしょう。
バックオフィス業務をDXするメリット
・効率化/コストの削減ができる
経理や企業間取引業務などのバックオフィス業務のDXが進むと、大幅な人的コストの削減につながります。後述する法律・制度に対応する電子化をすすめるためにもDXを導入すると、大きな工数の削減効果が可能になります。
・働き方改革を推進できる
2019年以降、働き方改革関連法が進められており、現在では残業時間の上限規制や過労死ラインの見直しなどが中小企業にも適用されています。
バックオフィス業務のDXが進むと、経理や企業間取引業務担当者の働き方を大きく変えることになります。定型業務が自動化されると業務の効率は向上し、特に月末・期末・年度末などの数字や取引の締めの時期の残業時間を大幅に削減することが可能になります。
また、DXを進めることでテレワークをしやすい環境も整います。コロナ禍においてもまだ紙に押す印鑑が必要とされるなど、経理や企業間取引ではなかなかデジタル化が進まないといわれてきました。しかしDXを進めることによって、バックオフィス業務にもテレワークを導入でき、多様な働き方を実現することができます。
・フロント業務などの本業を強化できる
一般的に、企業の業務は売上・収益に直接貢献する営業や販売などのフロント業務と、前述した企業活動に必要な経理や企業間取引を行う購買などのバックオフィス部門で成り立っています。
述べてきた通り、バックオフィス業務のDX推進によって効率化が進むと、人材リソースに余裕ができ、本業に人を投入しやすくなります。企業の本来のミッションである売上・収益の向上へ力を入れることができるようになります。
・企業評価が高まり優秀な人材を確保しやすくなる
バックオフィス業務のDXが進むと、テレワークによる働き方改革やペーパーレス化による環境貢献などを企業としてアピールできるようになります。働きやすい企業は、新卒や転職者に注目され優秀な人材集まりやすくなります。環境貢献はCSRとして企業の価値向上につながり、企業イメージも上がり人材の確保もしやすくなり、企業力の向上になるでしょう。
今回は、バックオフィス業務のDXの意義とメリットについてお伝えしました。次回はバックオフィス業務に関する国の施策である法律・制度としてインボイス制度・電子帳簿保存法と取り組み事例について解説します。