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業務プロセス改善

2023年10月16日

冠婚葬祭、ダイバーシティのDX事例

「えっ! あのビジネスでも?」意外なジャンルのDX推進事例<後半>

葬儀関連サービスのDX推進事例

近年、葬儀や終活、相続といった“ライフエンディング”の分野でもIT・デジタルの活用が進んでおり、海外では「DeathTech」、日本では「エンディングテック」「葬テック」などと呼ばれています。長野県で家族葬サービスを提供している株式会社つばさ公益社は、全社的なDXを通して新ビジネス創出と働き方改革を両立している企業です。

ビジネス面では、元々おこなっていた地元での葬儀サービスだけでなく、EC(オンラインショップ)を活用した全国向けの葬儀サポートサービスを展開。組み立て式の棺や骨壺を始め、葬儀社の手を借りずに自宅で葬儀をおこなうために必要な葬具が安価で揃う『DIY葬セット』や、弔電や香典の手渡しを代行する『オンライン弔問』など、葬家(喪家)のコスト減・負担減につながる商品を販売しています。

また葬儀関連以外でも、2022年8月から高齢者の孤独死を防ぐためにIoTデバイスを活用した見守りサービスを開発しています。『見守りスイッチ&センサー』という小型の電子機器が一定時間利用者の動きが検知できなかったり、利用者が機器のスイッチを押したりした場合、コールセンターから本人または家族に安否連絡が入るというもの。オプションとして、緊急の際の駆けつけサービスも提供しています。

働き方改革ではスマートフォン向け業務アプリを自社開発し、業務効率化を実現。葬儀サービスにおいても、来客確認用センサーや遠隔接客システムの利用により、少人数で複数の斎場への対応を可能にしています。多くの企業が24時間365日体制という葬儀業界において、週休3日の定着、有休取得率100%という実績はDXによる大きな成果と言えるでしょう。

参考1:2022.08.06 信濃毎日新聞経済面「日本DX大賞2022 優秀賞」受賞紹介|株式会社つばさ公益社
参考2:2022.07.21 高齢者「見守りスイッチ&センサー」日本経済新聞で紹介|株式会社つばさ公益社

ブライダル関連サービスのDX推進事例

生涯未婚率の上昇、結婚式を挙げない“ナシ婚”の増加など、いくつもの逆風に晒(さら)されているブライダル業界。そんな中、IT・デジタルを駆使して続々と新たなブライダルサービスを創出しているのが株式会社エスクリです。2023年6月には、業界で初めて経済産業省が定める「DX認定事業者」にも認定されています。

同社は元々、“駅チカ”のビルを中心に結婚式場を展開するという前代未聞の戦略で急成長を遂げた企業。直近で最大級の逆風とも言えるコロナ禍でも、自社開発の結婚式ライブ配信サービスをスタートさせて注目を集めました。

ただし、ライブ配信といっても一方的に挙式の映像を流すだけではありません。オンラインでご祝儀を受け渡すサービス、チャット機能を活用したお祝いコメント送信サービス、さらに参列できないゲストへ“婚礼会席重”を宅配するサービスなど、様々な機能を実装。その他、リアルの結婚式向けにも、XR(クロスリアリティ)技術を活用した遠方式場の疑似内覧体験というユニークなサービスを提供しています。

こうした同社の取り組みの根幹とも言えるのが効率的なデータ活用。自社開発したシステムには、案件情報、顧客情報、見積・請求情報、受発注管理情報、接客履歴、ゲスト情報などが一元管理されており、蓄積したデータを分析することで、上記のようなサービス開発や従業員の生産性向上につなげているということです。

参考1:DX Policy & Strategy|株式会社エスクリ
参考2:ブライダル業界初!エスクリ、経済産業省が定める「DX認定事業者」に認定|株式会社エスクリ

女性技術者育成におけるDX推進事例

企業のDXと言えば、通常は“自社”のビジネスや組織を変革するために取り組むもの。しかし北九州市の建築会社、有限会社ゼムケンサービスは、建築業界の古い構造を変えるべくDXを推進しています。

代表を含め従業員のほとんどが女性という同社が目指しているのは、多様な人材が働ける「新しい建設産業」。具体的には、建築現場への女性や若者の定着を阻んできた「拘束時間の多さ」や「多様な専門知識」などの障壁を取り除くためにIT・デジタルを活用することです。

DXを始めるにあたってまず取り組んだのは、従業員のITリテラシー向上でした。そのために一人ひとりにノートPCやモバイル端末を支給し、全員でのテレワークやSNSを活用した日報報告、データのクラウド共有などに挑戦。特に効果的だったのがERP(基幹システム)の導入だったようで、こうした取り組みの積み重ねにより生産性が向上し、社員数はそのままで売り上げは4倍以上、1人当たりの売上は大手ゼネコン含む業界平均を超えたということです。

さらに同社は、全国の建設業の女性や若者の育成に貢献するためのIT・デジタルサービスの開発も推進しています。その一つがAIとAR(拡張現実)技術を利用した『AI+AR(愛ある)マネジメントツール』。現場経験の浅い作業者も、遠方の経験豊富な技術者とタブレット端末で現場の状況を画像で共有し、コミュニケーションを取りながら作業することができるシステムです。AIが注意すべき箇所を自動で知らせる機能や、現場独特の専門用語を翻訳する機能なども実装されています。

もう一つのサービスは、2023年4月にスタートした人材育成サポート・ナレッジ共有のための『DIY FRIENDS』。経験の少ない女性や若者が、女性建築家からスキル・ノウハウを学んだり、リモートで相談したりできるWebサービスです。同社はこうした取り組みが評価され、経済産業省主催の『DXセレクション2023』にて審査員特別賞を受賞しています。

参考1:北九州オンリーワン企業2021|北九州市
参考2:DX Selection2023|経済産業省
参考3:【DXセレクション2023】審査員特別賞・有限会社ゼムケンサービス|経済産業省YouTube

以上、今回はメディアであまり注目されることのない意外な分野のDX推進事例を紹介してきました。とはいうものの、社会全体で急速にデジタルシフトが進んでいる現状を鑑みれば、もはやDXには“意外な”分野など存在しないのかもしれません。むしろ、「自社のビジネスはDXとは関係ない」「向いていない」と思い込んでいる人が多い分野ほど、(もちろん成功させることは容易ではありませんが)いち早くDXに取り組むメリットが大きいと言えるのではないでしょうか。

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