組み合わせると相乗効果! RPAとIT・デジタルツールの併用・連携事例
こんな意外な活用法も!?まだまだ広がるRPAの可能性<後半>
RPAは単体の導入でも大きな効果を発揮しますが、他のITツールやシステムと連携・併用することでさらなる相乗効果が期待できます。御社の業務改善のヒントになるかもしれない事例をツール別に紹介しますので、RPAを導入している企業の方もそうでない企業の方も是非参考にしてみてください。
OCR+RPA連携による照合作業の自動化事例
ある金融機関では、投資信託の口座開設業務にRPAを導入しました。目的は、本人確認のためにおこなう申込書と顧客情報(普通口座の情報など)の照合作業と、その後のシステムへの入力作業を自動化すること。その際にRPAと連携させたのが「OCR(Optical Character Recognition/Reader:光学文字認識)」でした。
OCRは、紙の文書に記されている文字をスキャンしてデジタルデータ化できるソフトウェア。特にフォーマットが統一された「定型帳票」の読み取りに優れています。同行では下図のように、口座開設申込書に顧客が記入した内容をデータ化するために活用しました。
OCR+RPA連携による照合作業の自動化事例(イメージ)
この連携によって本人確認に関する一連の業務を自動化し、業務時間を3分の1にまで短縮することに成功。ちなみにこのようなOCRとRPAの連携は、数年前に日本で開催された世界的なスポーツイベントでも、ボランティアの本人確認作業(公的身分証明書とシステム上の登録者リストの照合)に活用されています。
プロセス管理ツールとの併用によるRPA導入効率化事例
国内・海外のグループ企業を統括する株式会社西武ホールディングス。DX推進企業としても知られる同社は、「スモールスタートから徐々に拡大していく」という一般的なやり方ではなく、一気呵成にRPAを全社展開するプロジェクトに成功しています。
その成功のカギとなったのが、「プロセス管理ツール」を併用し、ベンダーと進捗を共有しながら進めたこと。通常、これくらいの規模の企業がRPAの導入から運用を内製化しようとすると、ロボットの設計・開発に多くの工数を取られたり、作業者により品質にバラつきが出たりして、安定した展開が容易ではありません。そこで同社は、グループ全体で統一した仕組みを構築することを目的に、プロセス管理ツールで一連の作業を一元管理することにしたのです。
プロセス管理ツールとの併用によるRPA導入効率化事例(イメージ)
プロセス管理ツールは申請・承認作業のステータスも可視化できるので、チームメンバーに逐一メールなどで報告する手間が省けます。同社はこのプロジェクトにより、グループ企業も合わせて1年で約100体ものロボットを稼働・定着させ、業務時間や工数の削減を実現しました。
AI活用ツール+RPA連携による自動化事例
RPAはAI(人工知能)を活用したITツールとも組み合わせて活用されています。とりわけ相性が良く、頻繁に併用されているのが「AI-OCR」です。AI-OCRは先述のOCRにAIの技術を活用したシステム。ディープラーニング(深層学習)によって継続的に文字の読み取り精度向上させることができ、取引先ごとにフォーマットが異なる「非定型帳票」の手書き文字をデータ化することも可能です。
OCRと同様、RPAとの連携はシステム入力を伴う紙帳票の処理業務での活用が一般的ですが、他にも例えば保険代理店I社では、社内のペーパーレス化を推進するために活用しています。保険申込書などの書類を手動でスキャンすると、後は自動でデジタルデータ化し、検索しやすいようにファイル名も統一したうえで一元管理できる仕組みを構築。保管場所や検索時間などの課題解決を実現しています。
もう一つRPAとよく併用されているのが「AIチャットボット」です。AIチャットボットは主に問い合わせ対応業務の省人化に活用されているツールで、ユーザーが入力した質問に自動で応答することができます。RPAとの連携は、入力作業を伴う問い合わせ対応や申請手続きの自動化に用いられることが一般的です。
例えば大手エネルギー企業E社では、社内申請業務を自動化するためにAIチャットボットとRPAを導入。従来は「申請者が社内システムからExcelやWordで作成した申請書をダウンロードして必要事項を記入」⇒「担当部署にメール送付」⇒「担当者が社内システムを使って申請」というステップが必要でした。
AIチャットボット+RPA連携による社内申請業務の自動化事例(イメージ)
しかし連携後は、申請者がAIチャットボットに申請内容を入力するとRPAによってシステムへの登録がおこなわれ、自動で管理者や担当者にメールが届く仕組みを構築。1件の申請にかかる時間を70~80%ほど短縮することに成功しています。
RPAの活用領域はまだまだ幅広く、今回紹介した事例以外にも、アルバイトのシフト作成やホテルの宿泊予約管理、さらには機械設計においてコンピューター上でシミュレーションをおこなう「CAE解析」などの自動化にも活用されています。
また、連携するツールやシステムも、ERP(基幹業務システム)やMA(マーケティングオートメーション)といったビジネスでの定番ツールのほか、近年は機械学習や自然言語処理技術を組み合わせて、判断が必要な「非定型業務」を自動化する動きも出てきています。
この『DX-labo』の他の記事でも、以下の通り業界・業種別にRPAのさまざまな活用法を紹介しています。気になるテーマがあれば、是非一読してみてください。