AI戦争?
ChatGPTとAI戦争の始まり ~GoogleやMicrosoftなどの動きは?~<後半>
前回は、ChatGPTに始まる最新対話型AIであるジェネレーティブAIの動向と、AI戦争ともいわれはじめた、この業界の様相についてお伝えしました。今回はGoogleやMicrosoftが提供するジェネレーティブAI開発競争や、プロンプトエンジニアリングなどについて解説していきます。
Google
AI戦争に出遅れ「非常事態宣言」を発表したグーグル
2023年1月にニューヨーク・タイムズは、グーグルはChatGPTが同社に深刻な打撃を与えかねないと判断したと報じています。「現在グーグルにとっては緊急警報ボタンを押すような事態で、同社のビジネスを根底から揺るがす大きな技術革新が近づいている」と同紙は書いています。
グーグルのCEOのサンダー・ピチャイは、ChatGPTの登場を受けてコードレッド(非常事態宣言)を発動し、経営陣で会議を行い、全社幹部にAI分野への対応を最優先にするように伝えたといいます。グーグルはまた、「今年中に20以上の新製品を発表し、ジェネレーティブAIを備えた検索エンジンのデモを行おうとしている」と報じられています。
グーグルは、以前からAIの重要性を認識しており、10年ほど前に英国を拠点とするAI研究所「ディープマインド」を買収しました。また、画像の生成やアプリの開発を支援する複数のAIプログラムを計画しているとされます。
そして、2023年4月にGoogleの最初のジェネレーティブAIであるBardをリリースし5月には日本語対応も完了しました。なお、Bard の愛称は、詩人や吟遊詩人を指す英語の単語 “bard” に由来しています。
Microsoft
OpenAIに大規模な投資し「Bing」にジェネレーティブAIを搭載
Microsoftは2019年からOpenAIとの戦略的なパートナーシップを結び、機械学習と人工知能による情報のアウトプットの両方をこなすAIの研究・企画を進めてきました。
OpenAIによる自然言語処理、大規模な言語モデル(Large Language Model、LLM)に関わる開発に対して、Microsoftは大規模な投資とコンピューティングリソースの提供を行ってきました。その大きな目的の1つは、Microsoftによる既存のBtoB、あるいはBtoCの市場・ユーザーに向けた製品とサービスに最新鋭のAIを組み込み、他社製品との差別化を加速させるためです。
MicrosoftはOpenAIが開発したAIモデルに独自のチューニングを加えて、2021年の夏頃から次々に新しいプロダクトやサービスを市場に投入しています。
2023年3月にはWebブラウザのEdgeにジェネレーティブAIベースの検索エンジン「Bing」を組み込み正式にリリースしました。さらに、ビジネスでの定番アプリであるWord、Excel、PowerPoint、Outlook、Teamsを統合するツール「Microsoft 360 Copilot」が、OpenAIの最新AIモデルである「GPT-4」を搭載し今後リリースされることも明らかになりました。
注目されるプロンプトエンジニアリング
プロンプトエンジニアリングとは、AI に対して適切な質問や指示を与えることで、より望ましい結果を引き出す技術です。特に、ジェネレーティブAI に対して、効果的なプロンプト設計を行うことで、意図通りの回答や文章生成が可能となります。
効果的なプロンプト設計ができるようになると、AI とのコミュニケーションを円滑にし、より高いパフォーマンスを引き出すことができます。それにより、AI を活用した業務の効率を飛躍的に向上させることが可能になり、ビジネスにとって大きなアドバンテージをもたらします。
プロンプトエンジニアリングの高度なスキルを身につけることで、AIの能力を最大限に活用し、ビジネスでの競争力を高めることができるでしょう。
まとめ
ジェネレーティブAIといわれる、大規模言語モデルを実用化したChatGPTの出現により、各社は猛スピードでAIの開発に力を入れ始め、一躍AI戦争という様相を帯びてきました。今後は、最後に述べたプロンプトエンジニアリングのハードルを下げる(質問し易い・理解力が高いなど)ことなどがAIには望まれます。既に、OpenAI、Google、Microsoftでは熾烈な競争が始まっていますが、これら以外のベンダーも出てくると考えられ、今後もAI戦争とも言える、AIの開発競争からはますます眼が離せなくなったといってよいでしょう。