サービスの常識を変える——エンタメ業界でのAI・ブロックチェーン活用事例
他業界でも使える!エンターテインメント業界の“心を動かす”IT・デジタル活用事例<前半>
映画やゲームの歴史を振り返れば明らかなように、エンターテイメントの世界とテクノロジーは切っても切れない関係にあります。もちろん現在も、作品・コンテンツの制作だけではなく、集客・マーケティング、イベント運営、ファン作りなど、さまざまな領域でテクノロジーは活用されています。
今回はそんなエンターテイメントに関わる企業のIT・デジタル技術活用事例を紹介します。業界は異なっても、「人(顧客・ユーザー)の心を動かすこと」が重要なのはどんなビジネスでも同じ。他業界の方も、既存サービスの改善や新たなサービス創出のヒントを得られるかもしれません。
AI活用事例
〜顧客満足度向上につながるダイナミックプライシング〜
ダイナミックプライシングは「変動価格制」とも呼ばれ、需要・供給の状況に応じて商品・サービスの価格を柔軟に変動させる手法を指します。メリットは、需要変動を緩和して、収益の安定化・拡大を図れること。近年はAI(人工知能)及びビッグデータ解析技術の発達によって高精度の需要予測が可能になり、さまざまな業種で導入が活発化しています。
エンターテイメント業界では、天候などの外的要因によって需要が大きく変わるレジャー施設での導入が目立ちます。中でも、2019年にいち早く導入して注目を集めたのが『USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)』です。
同園の導入目的は、日ごとの繁閑差の平準化と来園客の体験価値の向上。1日券の価格を日ごとに設定しており、需要=入場者数が少ない時期には従来よりも安価で購入できる日を設けているということです。反対に、入場者の増加が予想される時期は価格を上げて混雑を緩和し、アトラクションの待ち時間を短縮するなどして、来園客の満足度向上につなげています。
ブロックチェーン・NFT活用事例(1)
〜遊んで稼げるオンラインゲーム〜
ブロックチェーン(分散型台帳技術)は、プラットフォーマーを介さずに参加者同士で取引記録を管理し、不正や改ざんを防ぐ仕組みを指します。NFT(非代替性トークン)は、そのブロックチェーン上で発行・取引されるデジタルデータで、通常のデジタルデータと違い、「唯一無二性」を証明する鑑定書や所有証明書が付いていることが特徴です。
ブロックチェーンについては↓の記事でより詳しく解説しています。
ブロックチェーンは何が凄いのか?|DX-labo
まだまだ黎明期ではあるものの、コンテンツにおいてブロックチェーン技術の活用が進んでいるのがオンラインゲームです。ブロックチェーンゲームの大きな特徴は、ゲーム内で獲得した通貨やNFTアイテムなどを売買して収入を得られること。総称して、ゲーム(Game)と金融(Finance)を組み合わせた「GameFi(ゲーミファイ)」や、「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」とも呼ばれています。
Brilliantcrypto公式トレーラー「デジタル宝石の誕生」日本語字幕版|Brilliantcrypto – ブリリアンクリプト
上の動画は、株式会社Brilliantcryptoが2024年6月にリリースしたブロックチェーンゲーム『Brilliantcrypto』の宣伝映像。簡単に説明すると、プレイヤーがつるはし(NFT)を使って宝石(NFT)を採掘するゲームで、つるはしや採掘した宝石をゲーム内のマーケットプレイスで売買することで仮想通貨を得ることができます。また、その仮想通貨を仮想通貨取引所で日本円に換金することも可能です。
ブロックチェーン・NFT活用事例(2)
〜唯一無二のイベントチケット〜
エンターテイメント業界におけるNFTの活用事例としてよく目にするのが、コンサートや演劇、スポーツイベントなどで広がっている「NFTチケット」です。NFTチケットとは、チケットとしての機能だけでなく、イベントの記念特典をNFTで提供するサービスも付いたデジタルチケットのこと。記念特典には、イベント時の写真や出演者の限定ビジュアル、通常のデジタルチケットでは手元に残らないチケット半券などがあります。イベントの主催者・出演者にとっては、ファン作りやチケットの転売対策につながる点がメリットです。
『ローチケ』を運営する株式会社ローソンエンターテイメントは、2022年6月より『ローチケNFT』の提供を開始。NFTチケット購入者にNFTを受け取れるページのURLを送付⇒購入者はNFTを管理するアプリをスマホかPCに無料ダウンロード⇒URLにアクセスしてNFTを受け取るとアプリに保管される、という仕組みでサービスを提供しています。
次回後半記事では、現実世界と仮想世界を融合する先端技術や、話題の生成AIを活用した事例を紹介します。