これが最先端! DX先進企業の「業務変革」と「生成AI活用」
要チェック!『DX銘柄2024』で知る国内企業のDX最前線<後半>
前半記事に引き続き、経済産業省、東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表したレポート『DX銘柄2024』の中から、注目すべき先進的なDX事例を紹介していきます。
業務変革の取り組み(1)
【AIによる営業プロセス支援】
IT・デジタルによる業務変革はDXにおいて欠かせない取り組みの1つ。株式会社大塚商会では、AI(人工知能)を導入して営業活動における一連のプロセスの変革を図っています。
その内容は、同社の過去20年以上にわたる営業活動で蓄積したビッグデータをAIに学習させ、「訪問先選定」から「仮説立て」、「商談」、「契約・納品」、「信頼構築」までのプロセスをサポートさせるというもの。
例えば、商談においては効率的に進展させるための有効なアクションやタイミングをAIがアドバイスし、納品後のフォローではシステムの稼働状況など顧客の状況をAIが分析してフォローが必要なタイミングで知らせてくれます。訪問先選定では、AIの抽出によって年間10万件もの商談が発生しているということです。
業務変革の取り組み(2)
【RPAと画像認識AIの活用】
株式会社ニチレイでは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と画像認識AIを導入して業務変革をおこなっています。
事務作業の変革に活用しているのがRPAです。パソコンの定型作業をロボットによって自動化できるITツールで、高度なプログラミング知識は不要。同社でも、DX部門だけでなく、物流センターなどの従業員がシナリオ(ロボットに実行させる作業や処理の手順)を作成しています。2018年に全国導入を開始し、2024年3月末までに累計40万時間分の業務がRPA化されているということです。
2023年に稼働を開始したグループ企業の食品工場では、独自開発の画像認識AIを搭載した設備を導入。従来はチャーハンの製造過程で生じる「焦げ」は人が確認して取り除いていましたが、この取り組みにより、撮影した画像をもとにロボットが判定から除去までを自動で実行できるようになりました。具材の割合も画像で判定できるため、設備トラブルの発見にも貢献しているということです。
業務変革の取り組み(3)
【顧客ポータルと需要予測AIの活用】
マクニカホールディングス株式会社は、CRM(顧客関係管理)システム刷新の一環として、顧客ポータル(顧客向けWebサイト)を立ち上げています。目的は、対応の属人化によって回答までの時間が長くなっていた問合せ業務を改善することでした。
窓口をポータルに集約した結果、回答までのリードタイム短縮を実現。見積書の即日回答も可能となり、納期の短縮やサポート品質向上にもつながっています。また、顧客からポータルについての要望を積極的に吸い上げ、継続的に機能を追加することにより、顧客価値の向上にも貢献しているということです。
加えて、サプライチェーンマネジメント(SCM)システムの刷新も実施。その際に導入したのが需給予測AIでした。これにより、7万件に及ぶ需給計画の自動化が進み、需要予測の自動化率は80%を達成。2021年度から2023年度にかけて計画・予測担当者の数を25%削減し、削減した人員をより付加価値の高い業務に再配置することに成功しています。
生成AIの活用状況(1)
【社内向け活用事例】
最後に生成AIの活用状況を紹介します。
株式会社大和証券グループ本社は、2023年4月に金融機関として初めて全社員9,000人による生成AIの利用を開始しました。この取り組みにより、2023年末時点で累計5万時間の業務効率化を達成。新たに生み出された時間を、顧客接点などの領域に充てることができているということです。
自社に開発組織を設けている企業もあります。銘柄選定企業の中から特に優れたDX企業として『DXグランプリ企業2024』を受賞した株式会社LIXILでは、生成AIツールを開発する内製エンジニアチームを設置。例えばメールを返信する際に適切な文章を提案してくれるような、従来のオフィスツールに組み込まれた使いやすいツールを開発することで、従業員の業務の質と効率の向上をサポートしています。
生成AIツールと他システムの連携も進んでいます。ソフトバンク株式会社は2023年5月より、全従業員向けに独自のAIチャット『SmartAI-Chat』の提供を開始。同年8月には、同AIチャットと社内向けITヘルプデスクに蓄積した約3万6,000のQ&Aデータを連携させました。それまでAIチャットはインターネット上の公開情報などを基に回答を作成していましたが、この連携により、業務用のOA機器に関する質問など、自社向けの問い合わせや調べものにも対応できるようになっています。
生成AIの活用状況(2)
【社外向け活用事例】
生成AIを活用して新たな製品・サービスを創出している企業もあります。
総合自動車部品メーカーの株式会社アイシンは、音声認識の独自アルゴリズムと生成AIを活用し、聴覚に関する意思疎通をサポートするアプリ『YYSystem』を開発しました。もともと同社で就業する聴覚障がいを持つ方々のために開発されたアプリで、会話の内容をリアルタイムでディスプレイに表示できることが特徴です。
【公式】リアルタイム音声認識アプリ「YYSystem」紹介ムービー「いつでも どこでも 誰とでも会話できる」|【公式】YYSystem
また、拍手や笑い声、レストランのBGM,電車やサイレンの音などの環境音を認識してオノマトペ(擬音語・擬態語)やアイコンで表示することもできるので、周囲の環境や雰囲気を視覚的に理解することも可能。20ヵ国語以上に対応しており、海外の方とのコミュニケーションにも利用できます。
既にアプリ全体のダウンロード数は50万を突破。官公庁や企業の窓口を始め、さまざまな場所で活用されているということです。
今回参照した『DX銘柄2024』には、まだまだ多くの企業のユニークかつ素晴らしいDX事例が紹介されています。記事を読んで興味を持った方は、ぜひ一度ご覧になってみてください。