デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

ポストコロナの観光DX

観光産業におけるDXの推進<後半>

観光DXで使われる技術

ここでは、一般的にDXで使われるAIなどのさまざまな新しいデジタル技術が、観光DXではどのように活用されるかについて解説します。

■観光DXに活用されるデジタル技術

一般的にDXでよく使われるデジタル技術として、AI、IoT、ビッグデータ、ロボットなどがあります。これらに加えて観光DXで使われるのは位置情報の活用、AR/VR、生体認証、5Gなどが挙げられます。特に位置情報や、AR/VRなどは観光業ならではの活用があります。

■観光DXでのデジタル技術の具体的な活用例

・位置情報の活用
位置情報の活用例として挙げられるのが、位置に応じた観光ルートの推奨やナビゲーションです。今後は個人のログデータなども活用し、最適な観光スポットの推奨サービスなども増えるでしょう。また、昨今必要とされる混雑状況の可視化も可能です。観光地の混雑状況は当然ながら、コロナ対策で3密情報として活用される可能性も既に検討されています。

・AR/VR
AR/VRは、元々歴史建造物などの入れない施設の仮想空間の再現などで活用され始めていましたが、コロナ渦で実際に海外などに行けない中、既に航空会社などがバーチャル観光としてサービスを提供し始めており、地方でのバーチャル観光の検討も始まっています。

・生体認証
生体認証は、認証精度も上がってきており、決済に使われることが検証されています。財布などを持ちにくい温泉地や海岸などの観光地では手ぶら観光として検証が始まっています。

・ロボット
ロボットは宿泊施設での受付や清掃業務などに取り入られ始めており、今後も活用は拡大すると考えられます。ソフトウェアロボットであるRPAも宿泊施設の業務効率化を目的に導入が進むでしょう。

今後は5Gの提供エリアの拡大に伴って、これらのサービスのネットワーク基盤が高速化することから、さらにサービスは多様化するでしょう。

観光DXの取組事例(観光庁補助事業:観光DX推進に向けた技術開発及び地域観光モデルの構築

最後に、観光庁から公募があった観光DXの補助金で、実際に認可され今後開始される予定になっている実際の取組事例を2つ紹介します。

■顔認証と周遊eチケットを融合した手ぶら観光の実現

主な実施事業体:富士山エリア観光DX革新コンソーシアム(パナソニックシステムソリューションズジャパンなど)

・課題
山梨県富士吉田市をはじめとする富士山周辺エリアでは、自然と歴史的文化が融合した観光スポットとして有名です。しかしエリアが広大で各施設の距離が離れていることから、特定の施設のみ訪れて帰ってしまう観光客が多く、周遊観光にうまくつながっていないことが課題となっています。

・取り組み内容
これを解決するために、顔認証や周遊eチケット、そしてデータ分析を連携させることで、“手ぶら観光プラットフォーム”の開発を目指します。周遊eチケットによって交通や決済の利便性を向上させることで、エリア内の回遊性を高めます。
“手ぶら観光プラットフォーム”には、観光DXが実現できるように、ダイナミックプライシング・混雑回避・クーポン発行・自動着券精算などの機能を装備予定です。

■次世代型ガイド価値拡張プラットフォーム事業

主な実施事業体:観光ガイド活性化連携協議会(JR西日本コミュニケーションズなど)

・課題
兵庫県姫路市では姫路城などの史跡などを中心に、インバウンド市場の好調により体験型観光といったコト消費へのニーズが高まっていましたが、コロナ禍で急速に需要が失われてしまいました。

・取り組み内容
兵庫県姫路市ではポストコロナの訪日外国人に向けて、360度仮想空間構築技術やツーリズムガイド用の位置情報、ビッグデータ分析技術を駆使し、姫路エリアをオンライン仮想空間として再現します。さらにAIを活用したオンライン多言語ガイドサービスや、サブスク型デジタルコンテンツサービスの提供により、コロナ終息後の観光需要の流入を創出します。
デジタル技術として、VRによる仮想空間の再現やAIによるツーリズムデータの分析、AIオンライン多言語サービスなどを装備予定です。

■まとめ

このように、観光分野ではコロナ渦により大きな打撃を受けている中、デジタル技術の装備やDXの推進が始まっています。特にインバウンドの増加による「観光先進国」を目指してした政府は、観光産業に対して危機感を抱いており、さまざまな補助金によるDXを進め観光産業の変革を推進しています。観光産業はコロナ渦によりピンチに陥っていますが、補助金などを活用して逆にこれを大きなチャンスとしてDXが進む可能性があり、注目の分野とも言えるでしょう。

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