これから5GがもたらすDXの将来
DXを加速させる5G ~5GがもたらすDXの将来像~<後半>
5Gサービスとビジネス利用の現状(2021年)
キャリアによる一般向けの5Gサービスが始まって約1年半が経ちますが、対象エリアはまだ都市部の一部のみで、ほとんどのエリアは4Gとなっています。そのため5Gの特徴を活かしたサービスはまだこれからというのが現状です。
ただし、前述のローカル5Gはビジネス向けとして既に多くの実証実験が始まっています。2022年ころから本格的な実用向けのサービスが始まり、DXへの活用も活発化し2024年ころにはさまざまなサービスの提供が本格化すると考えられています。
■ビジネス向け実証実験の状況
現時点(2021年末)ではエリアが限られることなどから、実用の前の段階である実証実験が多く行われています。ただしその数は当初の予想より多く、大企業を中心にさまざまな分野でローカル5Gの実証実験が行われています。この要因にはDXの推進が活発化していること、コロナ禍によってリモートでのコミュニケーションや遠隔操作などの需要が急激に増えたことなどがあります。
以下に代表的な実証実験事例を紹介します。
「へき地診療所に対する中核病院による遠隔診療/リハビリ指導の実証実験」
遠隔の診療所/集会所と中核病院との間で、ローカル5Gと5G回線を活用し大容量の映像・バイタル・エコー画像をリアルタイムで転送します。その鮮明な画像を見ながら、中核病院からの指示・指導のもと、へき地診療所でリモートの診療やリハビリ指導を行います。
「農業ロボットによる農作業自動化の実証実験」
広大な農作地にローカル5Gの環境を用意し通信遅延が少ない点を活かし複数の農機の自動走行や監視を行います。サーバーとの通信がスムーズに行うことができるため農機ロボットの自動運転などが実現し人材不足を補うことができます。
■規制緩和と5Gの相乗効果
5G市場の拡大に伴い、5Gと5Gに関係性の高い他の分野でも規制緩和の検討が進められています。2022年にはドローンの有人地帯での目視外飛行が解禁される見込みです。これによりドローンと5Gを活用したさまざまなサービスの実証実験が始まるでしょう。また同時に多くのVRベンダーが新しいデバイスの市場投入を計画しており、5Gとこれらのテクノロジーの相乗効果によって、DXは加速すると考えられています。
5G が具現化するDXの将来像
最後に5Gが可能にするDXの将来像について、想定される3つの代表例を解説します。
<製造現場のDX>スマートファクトリー
工場のラインなどでは、多くのIoT機器やロボットなどがネットワークで繋がっています。ただし、Wi-Fiでは距離に限界があるため物理的な配置に制限があり、工場での自動化に影響がでていました。5Gではこれがすべて解決されるため工場の自動化が一気に進み、スマートファクトリー化が加速すると言われています。
<物流分野のDX>トラックの隊列走行
5Gを活用したトラックの隊列走行が既に実証実験として行われています。5Gで繋がった3台のトラックが隊列を組んで走行するもので、運転手の運転する先頭車を10m間隔で無人トラック2台があとを追う仕組みです。これが実現すると物流の効率が上がり人手不足解決の切り札にもなると考えられています。
<都市のDX>スマートシティ
スマートシティでは都市生活に関するあらゆることがデジタル化されデータで繋がることが想定されています。そのためには、都市の交通、防災、医療、生活インフラ、観光などあらゆる分野がネットワークで繋がる必要があります。そのためには大容量で高速なネットワークインフラが求められ、それを担うのが5Gです。今後5Gのエリア拡大が本格化すると同時に、スマートシティ構想が進むと都市のDXの実装も始まるでしょう。
■まとめ
2010年頃からのスマートフォンの爆発的な普及は、現在のDXをはじめ社会のさまざまな場面でのデジタル化が進む大きな要因となりました。その通信基盤となったのが4Gです。4Gの出現により社会は大きく様変わりしました。そして現在5Gが出現し次の大きな変革をもたらそうとしています。少し前にスタートを切ったDXは、5Gに支えられることによってさらに加速し、社会のさまざまな場面で大きな変革をもたらすと考えられています。