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あなたの会社は〈デジタル産業の企業〉?〈既存産業の企業〉?

『DXレポート2.2』で注目!「デジタル産業宣言」とは?<前半>

『DXレポート2.2』で明らかにされた課題

いざDXを始めてみたところで、ある程度進むべき道筋が明らかでなければ、遅かれ速かれ迷路に迷い込むか壁にブチ当たることは避けられません。そこで地図や道標のような役割を果たしてくれるのが、多くのDX推進企業も参照している経済産業省の『DXレポート』。その最新版(※2023年4月末現在)が、2022年7月に公表された『DXレポート2.2』(以下:レポート)です。

レポートによると、企業が深刻なシステム問題やIT人材不足に直面すると言われている「2025年の壁」に向けて全社的にDXを推進している企業の割合は増えており、各社とも着実に前進を続けているとのこと。しかしその一方で、産業全体において下記2つの大きな課題が浮かび上がっているようです。

(1)ユーザー企業とベンダー企業が“低位安定の関係”に固定されてしまっている

“低位安定の関係”とは、ユーザー企業とベンダー企業がお互いにデジタル競争を勝ち抜いていくことを困難にしている、“Win-Win”ならぬ“Lose-Lose”な関係性を指します。

具体的な弊害としては、ユーザー企業におけるITシステムのブラックボックス化やベンダーロックインがもたらす経営のアジリティ低下、ベンダー企業にとっては多重下請け構造による利益率の低下や、それに伴い技術開発投資が困難であることなどが挙げられます。

(2)企業のデジタル投資が、主に既存ビジネスの効率化に振り向けられている

レポートで引用されているJUAS(一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会)の『企業IT動向調査報告書2022』 によると、企業のデジタル投資のうち、約8割がラン・ザ・ビジネス(既存ビジネスの効率化)に占められており、バリューアップ(サービスの創造・革新)への投資が増えていないことが明らかになっています。

もちろん、こうした日本企業の保守性は今に始まったことではないでしょう。しかし、ビジネス環境が激変している現在、“効率化”というさほど変化が期待できない領域に多大な投資を続けることは、極端な言い方をすれば“現状維持”に投資しているのと同じこと。企業として大きな成長は期待できません。

以上2つの課題から浮かび上がってくるもの。それは、いまだに多くの企業が〈既存産業の企業〉にとどまっており、〈デジタル産業の企業〉への変革の兆しさえ見えていない状況です。

〈デジタル産業〉と〈既存産業〉の違い

突然〈デジタル産業〉〈既存の産業〉という言葉が登場しましたが、ピンと来ない方が多いかもしれません。注意したいのは、〈デジタル産業〉はIT関係の産業のみを指すのではないということ。簡単に言うと、業種問わず、急速にデジタル化が進む社会に対応する(できる)産業を指す概念です。

〈デジタル産業〉と〈既存の産業〉、それぞれの産業の特徴を一つ前の『DXレポート2.1』の内容を参考にまとめると、下の表のようになります。

デジタル産業と既存の産業それぞれの産業の特徴

出典:『DXレポート2.1』(経済産業省・デジタル産業創出に向けた研究会)より一部抜粋

引き続き『DXレポート2.1』の内容に沿って説明すると、社会全体のデジタル化がもたらしたビジネスへの影響といえば、インターネットやスマートフォンの普及による顧客接点のデジタル化。また、それに伴って①顧客体験の向上が主戦場になったこと、②市場の変化が加速し、迅速な対応が必要になったことが挙げられます。

そうした環境の変化に対応するために、上の表の赤字のような特徴を生かし、「大量のデータを活用して社会・個人の課題を発見し、リアルタイムに価値提供する」、「顧客や他社と相互につながったネットワーク上で価値を提供することで、サービスを環境の変化に伴って常にアップデートし続ける」といった取り組みを実現するのが、上述の〈デジタル産業の企業〉なのです。

要は〈デジタル産業の企業〉とはすなわちDX推進企業のことですが、経済産業省がレポート上であえてこのように呼んでいるのは、上述の課題、とりわけ1.のような構造的な問題により個社単独でのDXが困難な企業が多数存在するため、それぞれの企業が他社を巻き込み、産業規模でDXを目指すことが有効である、といった考えに基づいてのことのようです。

では、〈既存産業の企業〉が〈デジタル産業の企業〉へと変革するためには、どうすればよいのでしょうか?
レポートにおいて、その手段として提示されているのが次の3つのアクションです。

① デジタルを、省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべきであること

② DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく、「行動指針」を示すこと

③ 経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観をもつ同志を集めて、互いに変革を推進する新たな関係を構築すること


そして、企業がこれらのアクションを実現できるよう策定されたのが、DXによって収益を向上させるための行動指針をまとめた『デジタル産業宣言』です。次回、後半の記事で詳しく紹介します。

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