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高まる「DX人材」需要と人材サービス企業の新たな動き

人材サービス企業にDXのノウハウが必要な2つの理由<前半>

コロナ禍における労働市場の変化

新型コロナウイルスの感染拡大以降、労働市場において、いわゆる「DX人材」の需要が急激に高まっているようです。もちろん以前から一定数の求人はありましたが、その多くはITベンダーやSIer、コンサルティングファームなど、DXを商品・サービスとして提供している企業からでした。しかし現在は、IT系以外の事業会社でも求人が増えているということです。

一例を挙げると、国内最大級の会員制転職サイト「ビズリーチ」では、2020年7月から9月のDX関連の求人数が昨年同期比1.5倍に増加。さらに、同サイトの2020年度『レジュメ検索トレンドランキング2020』(ユーザー企業が転職検討者のレジュメ検索に使用したキーワードの順位)では、「DX」での検索数が2019年の27.3倍にまで伸びています。

当然このような市場の変化、企業の変化を、人材サービス(人材紹介・人材派遣)企業が見逃すはずはありません。実際に規模の大小問わず、多くの企業が新たな取り組みを始めています。

例えば、2020年9月から兵庫県・淡路島に段階的に本社機能を移行しているパソナ・グループは、同所にAIとIoTを徹底活用した『DX・BPOセンター淡路』を併設し、クライアント企業のインサイドセールスやWeb/デジタルマーケティング等の業務を行っていくことを発表しています。

同様にパーソルグループのパーソルイノベーション株式会社も、8月にDX推進組織の構築を支援する法人向けサービスの提供開始。DX戦略を立案・推進できるリーダー人材の紹介や組織づくり、社内人材の育成など、「人」を軸としたDX支援を展開しています。

異業種からの参入も増えています。クラウド会計ソフトを提供している株式会社マネーフォワードはDX人材に特化した人材紹介業への参入を発表。他にも人材派遣会社を設立したIT系企業、フリーランスDX人材と企業のマッチングサービスを開始したコンサルティング企業なども登場しており、この流れはまだまだ続くことが予想されます。

こうした状況を見てみると、実際に事業として取り組むかどうかに関わらず、人材サービス企業がDXの知識やノウハウと無縁でいることは、今後命取りになりかねないとさえ言えるでしょう。とはいうものの、まだまだ人材サービス業界にはDXについて十分に理解できていない人や誤解している人が多いのも実情です。例えばここまで当たり前のように「DX」や「DX人材」という言葉を使ってきましたが、その本来の意味、あるいは従来の「IT化」や「IT人材」との違いを明確に理解している人は果たしてどのくらいいるのでしょうか。

DXとDX人材についてのよくある勘違い

例えば、コロナ禍によってリモートワークが一般化して以来、デジタルによる「ペーパーレス化」や「脱ハンコ」の必要性が盛んに叫ばれていますが、ただクラウドツールなどを利用してそれらを実現しただけではDXとは呼べません。

また、保守・運用サービスを担うだけの人材はもちろんのこと、AIや3Dプリンター、IoT、ビッグデータなどの最先端テクノロジーに関する知識・スキルを持つ人材であっても、ただそれだけではDX人材と呼ぶには相応しくありません。

経済産業省が2019年7月に作成した『DX推進指標とそのガイダンス』によれば、DXの定義は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。

同じくDX人材についても、経済産業省が「自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人」と定義しています(『DXレポート2 中間取りまとめ』2020年12月)。

もちろん経済産業省の定義のみが正しいわけではなく、事実、DXやDX人材の定義自体は他にもいくつか存在するのですが、ここで重要なのは「変革」や「競争上の優位性を確立すること」、そしてそれを実現するための「構想力」「ビジョン」といったキーワードです。

つまりDXで求められているのは、単なるデジタル化(デジタライゼーション)ではなく、既存の仕事やビジネスの内容・進め方を抜本的に変え、顧客や社内外のユーザーに新しい価値を創出して企業成長を実現することであり、DX人材とは、リーダーであるか否かに関わらず、そのためのビジョンと戦略を構想し、推進できる人材のことなのです。

もちろん業種や企業の強み・弱みなどの条件によって取るべき戦略や手段は異なります。DXと言うとどうしてもビジネス変革のための「攻め」のアプローチが目立ちますが、上記定義での「組織、プロセス、企業文化・風土」に当る「守り」の側面を優先して変革した方が良いケースもあります。要はDX人材と一言で言っても、必要な人材は企業によって様々であり、最適なマッチングを実現するためには、人材サービス企業はDXについての深く幅広い理解が求められるというわけです。

実は人材サービス企業にDXのノウハウが必要な理由はもう一つあります。次回の記事で紹介します。

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