自治体DXの取組状況
自治体DXの取組状況とデジタル庁<前半>
自治体のデジタル化方針
近年、民間を中心としたDXの推進は活発化しています。さらに、社会全体が、DXが進みデジタル化するためには、行政を司る市町村などの自治体にもDXやデジタル化が必要とされています。自治体が提供するさまざまな行政サービス手続きのオンライン化など、自治体のデジタル化の加速が必要と言われています。
国の方針では、住民票などの住民向けサービスのオンライン化だけではなく、従来から行なっているさまざまな自治体内部での紙を中心としたアナログ業務などをIT化、デジタル化し、行政業務の効率化を図り、利用者である住民の利便性を図る、とされています。
今後、地方創生や新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ地域の観光などの活性化などにも、自治体のDXやデジタル化推進は必要とされるでしょう。 以下に、国が掲げる自治体のデジタル化の大きな柱として代表的なものを紹介します。
■自治体の行政手続のオンライン化の推進
マイナンバーカードなどの活用によるオンライン業務の拡大です。今後、もっと使いやすくしさらに利用者を増やし、今できる手続き以外にもサービスを拡大する、という方針です。
■自治体におけるAI-OCR・RPA等による業務効率化の推進
自治体は基本的にどの市町村も似たような業務を行なっています。したがって定型業務をデジタル化しRPAなどを使って大幅な効率化することが可能です。またOCRの中には手で書かれた文字や文章を判別しデジタル化できる機能を持ったものがあります。これらのAI-OCRを適用することにより、多くのアナログデータをデジタルデータ化し活用を拡げることが可能です。
■自治体におけるオープンデータの推進
自治体の持つ公開可能なさまざまな情報をデジタルデータ化し、オープンデータとして公開しベンチャー企業などと連携し地域の課題の解決を行う、という方針です。
■自治体におけるITシステムのクラウド化推進
各自治体で固有に稼働しているITシステムをすべてガバメントクラウドに2025年目処に集約する、という方針です。
進まない自治体業務のデジタル化
前述のようなさまざまな方針は出ていますが、なかなか進んでいないのも実態です。
■依然非効率な行政の業務
まず、そもそもマイナンバーカードの普及が遅れています。
2016年からデジタル化のキッカケとなるべく交付が開始されたマイナンバーカードですが、2021年3月末までに6000~7000万枚、2023年3月末にはほとんどの住民がカードを保有する状態を目標としていました。ところが、2021年4月時点で交付約3600万枚、人口に対する交付枚数率は約3割程度にとどまっています。
目標とのギャップは大きく、デジタル化の起爆剤と考えられているマイナンバーカードの普及促進は、今後最も大きな課題と言えます。
また、記憶にも新しいですが、2020年春の新型コロナウイルス対応による政府特別給付金のマイナンバーカードを使った給付では、大混乱が起きました。これは、マイナンバーカード自体はデジタル化されていましたが、マイナンバーカードが住民基本台帳とデジタルで連携していなかったことが要因です。そのため自治体職員が結局目検で確認する作業などの多くのアナログ作業が発生し、給付の遅延などが起きてしまいました。
デジタル化は部分最適を行うだけでなく、一気通貫で行なって初めて威力を発揮するため、今後改善が望まれます。後述するデジタル庁の発足もこのことが発端と言われています。
■AIやRPAなどの導入はまだ先行事例しかない状態
AI-OCR(手書き文字の読み取り)やAIによる会議での音声の議事録データ化、RPA導入による定型業務の自動化などは一部の行政の業務で取り入られ始めています。ただ、多くの自治体ではまだこれからの状態であり、今後デジタル庁の発足などを期に、導入の加速が望まれます。
■オ―プンデータやクラウドまだこれから
オープンデータは過去から取り組んでいる自治体はありますが、効果が見えにくい面もあり進み方は遅いと言わざるを得ません。ただクラウド化はガバメントクラウドとして全国統一予定されており、今後は加速すると考えられます。
これら自治体の取り組みがなかなか進まない中、政府はデジタル庁を発足させるとの発表を行いました。
次回、デジタル庁の方針や、何を行うのか、これから自治体のデジタル化にどのような影響があるのか、などについてお伝えしていきます。