デザイン思考のDXでの活用方法
DXと「デザイン思考」 ~DXに必要とされる「デザイン思考」とは?~<後半>
前回、デザイン思考の概要とデザイン思考がなぜDXに向いているのかを解説しました。今回はさらに具体的に、どうDXでデザイン思考を活用するのか、について紹介します。
デザイン思考はDXへの近道
DXを進めるためには新しいデジタルテクノロジーを活用します。新しいデジタルテクノロジーは多くの可能性を秘めていますが、それでDXの道筋や結果が見えてくるわけではありません。
ある課題に対してデジタルテクノロジーをどう適用し、トランスフォーメーションにつなげるかには、最初から明確な答えはありません。そのため、DXでは多くの場合、アジャイルという手法が使われます。アジャイルは今までの言葉に言い換えるとトライ&エラーです。まず新しいテクノロジーを試してみて、課題に近づいているかを確認し、さらに修正して、また進める、といった手法です。
デザイン思考は、このアジャイル手法に適しているとも言われています。DXを実現するためのデジタル技術の導入では、とにかく「やってみる」ことが重要だと言われています。机上であれこれ考えていいアイデアが出たところで、それを実証実験などで確認しなければデジタル導入はうまくいかないと言ってよいでしょう。
デザイン思考は「すぐに試してみる」シナリオになっているため、DXと親和性のよい手法と言われます。デザイン思考で実施する「アイデアソン」のあとはユーザーへのテストやPoCなどの実行フェーズにすぐに移ります。
今までのビジネスでは、ほとんどの場合PDCAで対応することができました。したがってDXもなんとかできないはずはない、と考えるのも普通です。ただし、述べてきたように、現在ではデジタルテクノロジーの進化により大きく状況が変わってきており、DXを進めるためには、手法の特性からデザイン思考を使うことが近道です。デザイン思考を使いこなすことが、DXの推進につながると言ってよいでしょう。
DXでデザイン思考を活用する時の具体的な5つのステップ
最後に、DXでデザイン思考を活用する際の、一般的な5つのステップを紹介します。
【ステップ1】ユーザーを観察し共感・理解する
デザイン思考の中心は人です。そのため、最初のステップでは、インタビューや観察を通して、ユーザーの悩みやビジネスの課題を理解することから始まります。
【ステップ2】ユーザーの課題を定義する
ステップ1で得た情報をもとに、ユーザーにとっての本質的な課題は何かを定義します。あるべき姿よりもさらに先の、ユーザーが本当に何を望んでいるか、を設定することが重要です。この課題を捉え間違うと、解決策も変わるため、とても大切なステップです。
【ステップ3】課題解決に向けたアイデア出し(アイデアソン)を実施する
次に、課題を解決するためのアイデア出しを行います。通称アイデアソンと言われ、語源はアイデア+マラソンの造語です。ここでは複数参加によるワークショップ形式で実施することが多く、現在はオンラインでもツールを使って実施することが可能です。多くのアイデアを出し、参加者はフラットな関係で自由に議論を行うことなどがポイントです。
【ステップ4】プロトタイプを作成する
アイデアをプロトタイプとして形にします。あくまでアイデアのコンセプト検証が目的なため、システム開発をするなどの手間は必要ありません。この時点では、手書きのペーパープロトタイピングや、簡易ツールを使った検証で十分です。
【ステップ5】ユーザーに対してテストを行う
最後に、作成したプロトタイプをユーザーに適用してフィードバックをもらいます。とても重要なフェーズでそもそも課題設定やアイデアがずれていないかなどの確認ができます。フィードバックを元に修正を加えながら、プロトタイプを改善していきます。そして最後に、本格的な次のフェーズのPoCに踏み切れるか、などの判断を行います。
まとめ
ご存知の通りDXは単なるデジタルテクノロジーの適用や業務の効率化ではありません。進め方や導入においては今までと異なった手法が求められます。デザイン思考があればDXがすべてうまくいく、というものではありませんが、DXを進めるためにはとても有効な手法といえます。DXを検討する際にはぜひデザイン思考の知識を身に付けて適用することをおすすめします。