自社のお手本に! DX先進企業の「新サービス創出」と「組織づくり」
要チェック!『DX銘柄2024』で知る国内企業のDX最前線<前半>
DXのお手本『DX銘柄』
『DX銘柄』とは、簡単に言うと「手本となるようなDX先進企業」を指します。年1回、経済産業省、東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって、東京証券取引所に上場している企業の中から選定されており、条件として「企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業」(経済産業省ホームページより)であることが必要とされています。
DXを検討している企業やスタートしたばかりの企業に役立つのが、毎回選定後に公表される「選定企業レポート」です。各企業のDX進捗状況や取り組みがまとめられており、DXの具体的なイメージや施策のアイデアを得ることができます。
その現時点での最新版が、2024年5月公表の『「DX銘柄2024」選定企業レポート』。今回はその中から是非チェックしておきたい取り組み事例を、「新製品・サービス創出」「組織づくり・人材育成」「業務変革」「生成AIの活用」の4つに分けて紹介していきます。
(※一部、同レポートに掲載されている「DXグランプリ企業」「DX注目企業」の事例を含みます)
新製品・サービス創出の取り組み(1)
【ビッグデータの活用】
DXの大きな魅力の1つが、デジタル技術やデータを駆使した製品・サービス開発。実際にDX銘柄選定企業からも、先端技術を活用した革新的な製品・サービスが続々と創出されています。
株式会社ワコールホールディングスは、顧客がインナーウェアを購入する際の対面接客によるストレスに着目し、2019年からセルフで利用できる3D計測サービス『3D smart & try(スマート アンド トライ)]』の提供を店舗で開始しました。3D計測はモノの三次元的な形状をデータとして取得できる技術で、同サービスではバストの体積(ボリューム)から適切なインナーサイズを知ることができます。
さらに、同サービスを通じて蓄積したビッグデータ(体型データ)の分析により、従来のブラジャーの設計において常識とされていた情報とは異なる新たな事実を発見。その発見に基づき、より一人ひとりの体にフィットする商品を開発し、2023年春夏シーズンから販売を開始しています。
参照:サービス開始から5年で計測者人数21万人を達成。なぜワコールの3D計測サービスが下着の領域を超えたサービスを展開するのか。|株式会社ワコール
新製品・サービス創出の取り組み(2)
【ブロックチェーンの活用】
三菱倉庫株式会社は、2022年に医薬品物流データプラットフォーム『ML Chain』をリリースしました。医療品物流において、従来は拠点ごとに散在していた流通過程の情報をクラウド環境に集約し、サプライチェーン全体を一元的に管理するシステムです。
同システムには、データの改ざんが難しく、トレーサビリティ(追跡可能性)を実現するブロックチェーン技術を活用。流通において重要な温度と位置に関するデータをリアルタイムで可視化し、関係事業者間で共有することで、今まで以上に高度な品質維持と安定供給を実現することができます。
参照:医薬品物流データプラットフォーム「ML Chain」を運用開始 - サプライチェーン全体をリアルタイムで可視化、より高度な品質管理をDXで実現 -|三菱倉庫株式会社
組織づくり・人材育成の取り組み(1)
【挑戦を促す組織カルチャーの醸成】
“変革(transformation)”を目的とするDXにおいて、「挑戦を促す組織カルチャー」の醸成は重要な取り組みです。例えば、株式会社三井住友フィナンシャルグループでは、業界のカラを破ってチャレンジする従業員を支援するための『社長製造業』という制度を設けています。
内容は、グループの新たな成長の柱となるような面白いアイデアがあれば、若手であろうとすぐに予算と人員を割り当て、社内ベンチャーを立ち上げ社長に抜擢するというもの。金融業界特有の良くも悪くも“堅い”企業文化を変革するだけでなく、金融以外の事業展開を通じて顧客価値を向上させるメリットもあります。
これまで同制度を通じて設立したベンチャーは10社以上。中でも、クラウド型電子契約サービスを提供するSMBCクラウドサイン株式会社は創業以来急成長を続けており、注目を集めています。
組織づくり・人材育成の取り組み(2)
【経営トップも参加するブートキャンプ】
DXを推進していくためには、いわゆる“デジタル人材”の育成が欠かせません。「全社員によるDX」を掲げ、内製開発を推進している株式会社クレディセゾンでは、ユニークな方法で組織全体のIT・デジタルリテラシー向上に取り組んでいます。
2023年には事業部門の社員にデジタル部門との兼務(業務時間の4割)を命じ、高度な知識・スキルがなくても開発できるノーコード・ローコードツールの習得を通じた人材育成制度を新設しました。また、全社員を対象としたデジタル技術の認定制度も構築。e-learningや独自の自主学習コンテンツを用意し、業務の隙間時間などに自主的に知識を習得できる環境も整えています。
また、育成の対象は一般社員だけではありません。社長を含めた役員が参加するノーコード・ローコード開発ブートキャンプ(研修)も開催。こうした会社一丸となった取り組みにより、同社のDX推進によって自動化された業務は、2019年から2022年までの間で累計79万時間(社員約400人分)を達成しています。
後半記事では業務改革、そして近年注目の技術である生成AIの活用事例を紹介します。