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今、「変われる企業」と「変われない企業」を分ける“能力”とは?

変われない企業に未来はない!?
AI時代の生存戦略「ダイナミック・ケイパビリティ2.0」

ビジネス環境の変化が激しい現在、企業が従業員に求めるスキル・能力は増える一方です。パッと思い付くだけでも、IT・デジタルに関するリテラシーはもちろん、データ活用力、課題解決力、コミュニケーション能力、リーダーシップ……など、キリがありません。

また、DXの普及以降は、今後発生する新たな業務・職種に適応するためのスキルを従業員に習得させるリスキリングに取り組む企業も目立つようになりました。

もちろん、こうした流れ自体は極めて自然です。しかし、いくら従業員の能力を高めても、それを活かす組織が旧態依然としたままであれば、成果につながらず“宝の持ち腐れ”にもなりかねません。実際、同じように優秀な人材を揃えた企業同士であっても、競争力にはっきりと差が生まれているケースは珍しくありません。

つまり、今や新たな能力の習得・向上が求められているのは、従業員だけでなく、企業も同様ということです。特に近年、その能力のひとつとして重要視されているのが「ダイナミック・ケイパビリティ」です。

ダイナミック・ケイパビリティとは

ダイナミック・ケイパビリティとは、簡単に言うと、「企業が環境変化に対応するために自らを変革していく能力」のことです。1997年にカリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスのデイヴィッド・J・ティース教授によって提唱された経営戦略論の概念で、日本語では「企業変革力」や「進化適合力」と訳されています。

ティース氏によると、企業が持つもうひとつの能力が「オーディナリー・ケイパビリティ」です。こちらは日本語で「通常能力」や「技能適合力」と呼ばれ、既存のビジネスモデルのもと、与えられた資源を効率的に活用して利益の最大化を追求する能力を指します。

オーディナリー・ケイパビリティは安定した環境下では大きな強みとなりますが、この能力だけに依存していると、想定外の事態や不確実性の高い状況では競争力を維持できません。むしろ変化への対応が遅れ、足かせにもなることさえあります。

そこで求められるのが変革力=ダイナミック・ケイパビリティです。つまり、ダイナミック・ケイパビリティの差こそが、「変われる企業」と「変われない企業」を分けると言っても過言ではないのです。

変革のカギは“既存資産の組み合わせ”

ただし、変革といっても、ダイナミック・ケイパビリティはゼロベースで何かを生み出す能力ではありません。カギとなるのが「共特化(co-specialisation)の原理」です。

共特化の原理とは、単体では大きな価値を生み出さない社内外の資産を、相互補完的に活用することで相乗効果や新たな価値を生み出す考え方です。つまり、ダイナミック・ケイパビリティにおいては、「すでに持っているモノ・コトをオーケストレーション(再構成・再配置・再利用)すること」が変革の起点になります。

その代表例として知られているのが、富士フイルムホールディングス株式会社の事例です。

同社はかつて世界的な総合写真メーカーとして確固たる地位を築いていました。しかし、2000年代に入ると、デジタルカメラの普及によって主力事業である写真フィルム市場が急速に縮小する危機に直面します。競合他社が環境変化への対応に苦慮する中、同社が目を向けたのは、そのフィルム事業で長年培ってきたノウハウでした。

具体的には、紫外線による写真の色あせを防ぐ抗酸化技術や、美しい写真に仕上げるために微粒子をコントロールする技術、写真フィルムの乾燥を抑えるために利用していたコラーゲンに関する知見など。こうした既存のノウハウを応用し、まったく異なる分野である化粧品の開発へと踏み出したのです。

現在では、サプリメントや医薬品も含むヘルスケア事業が同社の主力事業の一つひとつとなっており、「トータルヘルスケアカンパニー」へと進化を遂げています。これはまさに、既存資産の組み合わせから新たな価値を創造したダイナミック・ケイパビリティの実践例と言えるでしょう。

参照:Transforming the world, one smile at a time|富士フイルムホールディングス株式会社
参照:アスタリフト|富士フイルムホールディングス株式会社

AIで広がる「ダイナミック・ケイパビリティ2.0」

とはいえ、少し前までダイナミック・ケイパビリティは、潤沢なリソースを持つ一部の大企業に限られた“特殊能力”のような側面がありました。ほとんどの企業にとっては、重要性は理解しつつも、理想論に近い概念だったのです。

しかし現在、その状況は大きく変わりつつあります。その背景にあるのが、デジタル技術の急速な発展です。特にAIや生成AIを活用することで、有効な資産の組み合わせの発見や、変革に伴う意思決定・実行プロセスの効率化・高度化が、多くの企業にとってより現実的なものになってきているのです。

こうしたAI時代に新たなフェーズを迎えたダイナミック・ケイパビリティを、「ダイナミック・ケイパビリティ2.0」と呼ぶこともできるでしょう。続く後半記事では、そのダイナミック・ケイパビリティ2.0を実践するための具体的な方法を紹介します。

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