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生成AIの急成長で浮上する「AIの環境問題」

Green AIとAI for Green
――AI時代の環境対策最前線

生成AIは、私たちの仕事や生活を大きく変え始めています。一方、その急速な普及によって、新たな課題も浮上しています。それが、AIを動かすために必要となる大量の電力消費などデータセンターによる環境負荷です。
AIは、大量のデータを使った学習だけでなく、利用者からの質問に回答する「推論」、画像や動画、音声、コード、3D モデルなどの生成でも負荷のかかる計算処理を行います。AIの利用者や用途の増加により、AIサービス事業者はデータセンター建設を加速させています。
日本でも、これまで減少傾向にあった電力需要が、AI活用に伴うデータセンターや半導体工場の新増設などによって、今後は増加すると見込まれています。AIの普及と、エネルギー消費の効率化をいかに両立させるかが重要な課題になっているのです。
こうした中で注目されているのが、「Green AI」という考え方です。本稿の前半では、AIそのものの環境負荷を抑えるGreen AIについて、技術や企業の取り組み、ビジネスへの影響を紹介します。

AIの進化とともに大きくなる環境負荷

生成AIでは、大規模なAIモデルを学習させるために多数の高性能GPUなどを使用します。さらに、AIサービスが広く利用されるようになれば、日々の推論処理にも継続して電力が必要になります。
問題はサーバーの消費電力だけではありません。大量の熱を発生するサーバーを冷却するための電力や水、データセンターそのものの建設、AI半導体をはじめとする機器の製造など、AIを支えるインフラ全体で環境負荷が発生します。
もちろん、データセンターだけが世界の電力需要増加の原因ではありません。しかしAIの利用拡大によって、特定地域に巨大な電力需要が集中する可能性もあり、電力インフラへの影響を含めた議論が必要になっています。

「Green AI」とは何か

そこで重要になるのがGreen AIです。
Green AIとは、AIの精度や性能だけを追求するのではなく、AIの開発・運用に必要な計算資源や消費電力、環境負荷も考慮し、より効率的なAIを実現しようとする考え方です。
これまでAI開発では、モデルを巨大化し、大量のデータと計算資源を投入することで性能を高める方向が注目されてきました。しかし、AIが社会のさまざまな場所で使われるようになれば、「どれだけ高性能か」だけでなく、「どれだけ少ない計算資源・電力・エネルギーでその性能を実現できるか」も重要になります。
つまりGreen AIは、AIの進化を止めることなく持続的に発展させるための、新たな技術競争ともいえるのです。

AIを「軽くする」技術が進化

Green AIを実現する方法は、大きく「AIモデル」「半導体」「データセンター」の三つのレイヤーから考えることができます。
AIモデルでは、必要な性能を維持しながらモデルを小型化する「蒸留」と呼ばれる技術や、計算時に扱う数値の精度を下げる「量子化」などによって、計算量を減らす技術が進んでいます。また、用途によっては巨大な汎用モデルではなく、特定業務に適した小型モデルを使うことも有効です。
半導体では、AI処理に特化したGPUやTPUなどの性能向上とともに、単位電力当たりの処理能力を高める競争が進んでいます。
さらにデータセンターでは、高効率な冷却技術や再生可能エネルギーの活用などが進められています。AIモデルだけでなく、それを動かすハードウェアやインフラまで含めて効率化することが、Green AIには求められているのです。
日本でも、NTTのIOWN構想など、光技術を活用して通信・コンピューティング基盤の省電力化を目指す取り組みが進んでいます。また、総務省と経済産業省は、電力と通信インフラを一体的に整備する「ワット・ビット連携」を推進しており、AI時代を支えるインフラ全体での効率化が始まっています。

環境対策が「AIのコスト競争力」になる

Green AIは、環境対策だけでなくAIの運用コスト削減にもつながります。計算量を減らせば、必要なサーバーや電力を抑えられるためです。
大手テクノロジー企業も効率化を進めています。GoogleはAI向け独自半導体TPUの電力効率を高める一方、データセンターでクリーンエネルギーの導入を拡大。Microsoftも冷却方式の改善や再生可能エネルギーの調達などを進めています。
AIの利用が広がれば、「どのAIを使うか」だけでなく、「どれだけ効率よくAIを使うか」も企業のコストや競争力を左右するでしょう。Green AIは、環境対策とAIの経済性を両立させる取り組みでもあるのです。

前半では、AIそのものの環境負荷を抑える「Green AI」を見てきました。後半では視点を変え、AIで社会全体の環境負荷を減らす「AI for Green」の具体的な取り組みを紹介します。

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