デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

経営改革促進

2022年3月7日

“体験”で差をつけろ——ビジネスで重要性が高まるUX

DX戦略で重要な「UX」とは?<前半>

意外と多いUXに対する勘違い

レガシーシステムの刷新から部門横断型の組織づくりまで、デジタルトランスフォーメーション(以下:DX)で成果を上げるための重要な取り組みはいくつかありますが、UXもその一つです。

念のために説明しておくと、UXとはUser Experienceの略称で、直訳すると“ユーザー体験”を意味します。よく知られている言葉ではあるものの、意外と誤解や勘違いをしている方も多く、実際にビジネスの現場で使う際は注意が必要です。ここでは特に多い勘違いを2つ紹介しましょう。

まず一つ目は、「UXはWebサイトやアプリのデザインを最適化するための概念である」という勘違いです。確かにUXはWebデザインの文脈で頻繁に使われており、配色やレイアウト、ボタンの位置などを考える際に必須の概念ではありますが、本来、デザインは勿論のこと、オンラインのタッチポイント(顧客接点)に限った概念でもありません。

2010年に世界のUX研究者がまとめた『UX白書』という資料によると、UXは一枚岩の概念ではなく、「予備的UX」「一時的UX」「エピソード的UX」「累積的UX」という4つのタームで構成されていると書かれています。ここでは詳細には触れませんが、簡単に言うとUXとは、ユーザーの商品・サービス利用前の「期待・想像」から、利用後の「印象・振り返り」までをも対象とする、長期的な時間軸を持つ概念であるということです。

例えば、ネット通販やD2C(Direct to Consumer)ビジネスの場合であれば、ECサイトの見やすさ・分かりやすさだけでなく、集客のための広告やSNS、商品の魅力と品揃え、決済方法、発送や梱包の仕方、商品以外の同梱物、カスタマーサポートといった、オフラインを含むあらゆるタッチポイントがUXの対象になります。中でも梱包は、地味ながら“開封体験”に関わる重要な要素であり、ワクワク感を醸成するデザインにしたり、印象アップのためにエコフレンドリーな梱包資材を使用したりと、こだわりを持って取り組んでいる企業が増えています。

画一的なUXでは効果がない

UXに対してありがちな二つ目の勘違いは、“ユーザビリティ(使いやすさ)”との混同です。もちろん両者はまったくの無関係という訳ではありませんが、ユーザビリティはあくまでUXを向上させるための一つの要素に過ぎません。

上述の開封体験でも少し触れたように、UXのExperience(体験)には、“ワクワクする”や“使っていて飽きない”といった、ユーザーの感情や感性、価値観に訴えかける要素も含まれます。このようなUXへのこだわりで知られているのがコーヒーチェーン最大手のスターバックス。自宅でも職場でもない“サードプレイス(第三の場所)”を謳っている同社の、椅子の座り心地やテーブル間のゆったりとしたスペース、店員のホスピタリティなど、他のコーヒーチェーン店では味わえない居心地の良さを思い浮かべていただければ分かりやすいかもしれません。

ちなみに、UXの評価軸をまとめた「UXハニカム(The User Experience Honeycomb)」(Peter Morville,2004)では、下図のように「価値がある(Valuable)」を中心に、「役に立つ(Useful)」「使いやすい(Usable)」「探しやすい(Findable)」「信頼できる(Credible)」「アクセスしやすい(Accessible)」「魅力がある(Desirable)」という7つの項目が挙げられています。

UXハニカム

近年、ビジネスにおいてUXが重要視されるようになった背景としては、インターネットの普及による情報量の増大によって、商品・サービスの価格やスペックだけでは差別化が難しくなっていることが挙げられます。とはいえ、少なからぬ企業がUX向上に取り組んでいる現在、もはやありふれた体験では、ユーザーに価値を提供することは難しくなっているのも実情です。

そうした状況を打開するために有効なのが、DXによるUX向上、あるいは新たなUXの創出です。そもそもDXの目的の一つが「新たな価値・顧客体験をサービスとして提供すること」。経済産業省が実施する『デジタルトランスフォーメーション研修』の第一回目でも取り上げられているように、「ユーザー中心」のサービスを実現できることが大きなメリットです。「DX=オンラインのサービス」というイメージを持っている方が多いかもしれませんが、デジタル技術を活用してユーザーに関するデータを収集・分析することで、オフラインのユーザーにもこれまでにない体験を提供することが可能になります。

次回は、実際にDXを推進している企業のUX取り組み事例を紹介します。

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