あらためて「クラウド」とは何か?
DXに不可欠!今さら聞けない「クラウド」の基礎知識<前半>
クラウドとオンプレミスの違い
DXを進めるにあたってはクラウドの活用は必要不可欠、と言っても過言ではありません。総務省「令和2年通信利用動向調査の結果(概要)」という資料によると、今や日本国内のおよそ7割の企業が何らかのクラウドを利用しているようですし、2018年6月には、政府も情報システムの調達においてクラウドサービスの利用を第一候補として検討する「クラウド・バイ・デフォルト原則」の採用を発表しています。
このようにビジネスにおいてすっかり一般化したと言っていいクラウドですが、しかし、その特性についてきちんと理解している人は意外に少ないのではないでしょうか。もちろんIT担当者でない限り、高度な専門知識は必要ありません。とはいえ、DXを引っ張っていくべき経営層及びマネジメント層なら、「クラウドとは何か?」「そのメリットは?」といった基礎的な質問に即答できるくらいの知識は必要でしょう。
ではあらためて、クラウドとは何なのでしょうか?
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の資料にも記されているアメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)による定義は、「共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きまたはサービスプロバイダとのやりとりで速やかに割当てられ提供されるもの」というもの。
より簡単に言い換えると、サーバーやソフトウェアといった情報システムの構成要素をユーザー(企業)が構築・運用するオンプレミスとは異なり、インターネットなどの通信ネットワークを介して必要に応じて利用する形態を指します。
参考:第7回デジタルサービス実現の基礎②クラウドって何?|経済産業省(YouTube)
ちなみにクラウドは“クラウドコンピューティング”とも呼ばれ、2006年、当時のGoogle CEOがスピーチの中で使ったことで広く知られるようになった言葉。クラウドは“雲”という意味の英単語ですが、コンピューターが雲のように見えないところにあることや、様々なシステムがまるで雲の中から降ってくるみたいに利用できるイメージから、そのように名付けられたという説もあるようです。
クラウドを利用するメリット
ビジネスでクラウドを活用するメリットは大きく以下の3点です。
〈1〉コストを抑えられる
クラウド環境ではサーバーなどのインフラ環境を自社で調達する必要がないため、オンプレミスに比べてイニシャルだけでなく、保守や運用のコストを抑えることができます。
〈2〉ハードウェアの運用負荷が軽減できる
クラウドを活用するとオンプレミスで必要だったサーバーやネットワーク機器の保守管理などが不要になり、担当者の負担軽減につながります。
〈2〉柔軟かつスピーディーな拡張性
オンプレミスで容量などのリソースを拡張するためには追加投資が必要でしたが、クラウドでは物理的な設備の用意が不要です。拡張も縮小もユーザーの要求に応じて迅速に実行することができます。
また、クラウドの実装モデル(サービスとしての提供モデル)は大きく次の2種類に分けられます。
■パブリッククラウド
不特定多数のユーザーが使いたいときに使いたいだけ利用できるモデルです。システム管理はベンダープロバイダーが行うので利用負担が小さいことが特徴です。
■プライベートクラウド
一つの企業のためにクラウド環境を構築するモデルです。セキュリティ面を含め、それぞれの企業に合わせて柔軟なシステム構成を実現できることが特徴です。
上記2種のモデルに比べると利用規模は小さいものの、他にも特定の業界団体やコミュニティを対象とした「コミュニティクラウド」や、クラウドとオンプレミスを混在させる「ハイブリッドクラウド」といったモデルも存在します。
なお、本格的にDXを推進している企業では、先述のようなクラウドのメリットを最大限生かすために、既存の基幹システムをクラウド基盤上に移行(クラウドリフト)し、その後アプリケーションをモダナイズ(クラウドシフト)する「リフト&シフト」という取り組みを通じて「クラウドネイティブ」と呼ばれるアーキテクチャを構築する企業も多く見られます。クラウドネイティブについて解説するとなると専門的・技術的な説明が多く必要になるため今回は省略しますが、興味のある方は↓の記事をご覧ください。
【入門編】クラウドネイティブの特徴・メリット・事例|SmartStage
次回記事では現在クラウドで最も一般的な利用形態であるパブリッククラウド型のクラウドサービスについて解説します。