デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

業界の“当たり前”を覆す——DX先進企業のビジネス変革事例

『DX銘柄2026』で知る、企業のDX最前線

IT・デジタル技術の進化によって、これまで難しいとされてきた課題の解決や、新たな価値創出が可能になっています。後半記事では、そうした業界・業種の“常識”を覆す取り組みを通じて、ビジネス変革を進めているDX推進企業の事例を紹介します。

商品開発高度化へのAI活用事例

AIの大きな強みの一つは、熟練者の感覚や経験といった「暗黙知」を、数値化などによって誰でも理解・活用できる「形式知」へと変換できることです。こうしたアプローチを商品開発に効果的に生かしているのが、キリンホールディングス株式会社です。

これまでビールなどの香味開発は、熟練の技術者が持つ経験と、限られたデータに頼らざるを得ないという課題がありました。そこで同社が開発したのが、「おいしさ」に影響する重要な成分を、効率的かつ網羅的に特定できる嗜好AI『FJWLA(フジワラ)』です。

長年にわたり蓄積してきた香味に関する消費者調査データと成分分析データをAIに学習させることで、「味覚」と「化学成分」の相関関係を定量的に可視化。消費者が「おいしい」と感じる要因を成分レベルで分析することが可能になり、理想とする香味(例:消費者がリピートしたくなる味など)を、高い「再現性」と「スピード」を両立しながら開発できるようになったのです。

なお、このAIは既に実用化されており、2026年の同社の主力ビール商品のリニューアルにおいても開発支援ツールとして利用されています。

参照:キリンホールディングス株式会社|DX銘柄2026選定企業レポート
参照:ビールの香味成分を特定する嗜好AI「FJWLA」を独自に開発|キリンホールディングス株式会社

アナログを起点としたデータ活用事例

依然として紙や手書きなどのアナログ文化が根強く残るサービス領域であっても、アプローチ次第でデータに基づく変革は十分に可能です。『クロネコヤマト』の宅急便で知られるヤマトホールディングス株式会社も、「アナログ情報のデジタル化」で大きな成果を上げています。

同社は2020年1月に発表した経営構造改革プラン『YAMATO NEXT100』において、データドリブン経営への転換とDX推進を掲げました。その実現に向けて障壁の一つとなっていたのが、個人顧客を中心に根強く残る「手書き送り状」のニーズです。こうしたアナログ情報の介在が、リアルタイムでのデータ活用を阻害する大きな要因となっていました。

そこで同社は、顧客の利便性を損なわずにデジタル化を進める施策を展開。手書き文字を高精度で読み取りデジタルデータ化する「AI-OCR」や送り状発行システムの設置などを進めた結果、送り状情報のデジタル化率を約94%まで向上させることに成功したのです。

こうしたデジタル化によって取得・蓄積したデータは、配達時の自動ルート作成や業務量予測の精緻化など、AIを活用したさまざまな取り組みの基盤としても活用されています。また、一連の効率化によって創出された人的リソースを、営業や集荷といったより高付加価値な業務へとシフトさせる取り組みも進めています。

参照:ヤマトホールディングス株式会社|DX銘柄2026
参照:経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を策定|ヤマトホールディングス株式会社

BtoBサービスにおけるデジタルツイン活用事例

IoTセンサー(モノや環境の状態をデータで収集・送信する装置)やAIなどの技術を用いて、現実世界を仮想空間上で再現する「デジタルツイン」。主に製造業や都市開発の分野で活用が進んできましたが、物流領域で先駆的な取り組みを進めている企業も登場しています。

佐川急便株式会社などを傘下に持つSGホールディングス株式会社のグループ会社、SGシステム株式会社は、2025年11月より物流現場向けに自動化提案をおこなうコンサルティングサービスを開始しました。

物流業界ではEC市場の拡大による物流量の増加や深刻化する労働力不足などにより、省人化・自動化ニーズが急速に高まっています。しかし、作業者やAGV(無人搬送車)などの機器・設備が複雑に関係し合う倉庫内の業務は、従来のExcelを用いた分析では最適な運用方法を検証するシミュレーションの実施が困難でした。

そこで活用されているのが、デジタルツインです。倉庫内のさまざまな動きを仮想空間上に再現し、入荷から出荷までの一連の工程をシミュレーションすることにより、リソースの稼働率やエネルギー消費量、コストなど、さまざまな定量データに基づいた改善策を検討・提案できるようになっています。

参照:SGホールディングス株式会社|DX銘柄2026選定企業レポート
参照:デジタルツインで物流改善を推進|SGシステム株式会社

今回は『DX銘柄2026』選定企業の取り組みの中から、ビジネスや組織変革のヒントになりそうな事例を厳選して紹介しました。

記事で取り上げた事例に限らず、選定企業全体の傾向として見えてくるのが、生成AIやAIエージェントを含め、AI活用がもはや企業活動の「前提」になりつつあるということです。業務効率化の手段にとどまらず、企業価値向上や新たな価値創出のための中核技術として活用している企業も少なくありません。

また、こうした動きに合わせて、社内でAI活用を推進する「AIアンバサダー」を設置したり、生成AIを使ったアイデアコンテストを開催したりと、AIを使いこなすカルチャーを根付かせようとする取り組みも広がっています。

さらに社内向け施策としては、前半記事で紹介した株式会社トリドールホールディングスのように、従業員体験(EX)を重視し、社員の働きがいやエンゲージメントの向上に注力する企業が近年増えてきている点も見逃せません。

紹介した取り組みは、選定企業の事例をまとめた『DX銘柄2026選定企業レポート』を参照しましたが、あくまで掲載内容の一部です。ぜひ実際のレポートもご覧いただき、記事では触れられなかった先進的な取り組みもチェックしてみてください。

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